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有川式・過激な自然農法?
- 2008/10/09(Thu) -

《 不耕起農法による農業革命で農薬・化学肥料をゼロに! 》


アーク・テクノリサーチ 株式会社

代表 有川 晴彦

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0.ダイオキシンの主な発生源は実は除草剤?


  ゴミ焼却施設からのダイオキシン発生が騒がれている。しかしこれは、より重大な“犯人”を世論からカモフラージュするもので、除草剤によるダイオキシンの絶対量は実にその1万倍以上!? という研究報告がある。
まさか?、しかし、ベトナム戦争時の枯葉剤によるダイオキシンの被害はよく知られており、その枯葉剤と除草剤は本質的に同じであること、また長期にわたって日本全国で散布された除草剤の膨大な量を考えると、この報告は大筋において信憑性の高い話であると思う。
 いずれにしても農薬や化学肥料は、ダイオキシンに限らずとも大量の人工物質を自然界にバラまいて環境撹乱物質となり、直接的には農民を間接的には国民全体を癌などの難病に追いやり、草1本、虫1匹いない田畑を出現させることで、メダカなどの小動物を大量に殺戮して、美しい日本を支えていた腐葉土の多くをスポイルした。
そして国土の保水性が失われた結果、平成10年における各地の水害の隠れた原因となったのである。
 春先には田植えの時期が来る。田圃には水が張られるが、なんと水には最初から除草剤が“ブレンド”されていたり、リン酸を大量投入する(一般国民には無リン洗剤を、等と宣伝するくせにとんでもない矛盾である)。
さらに間断潅水といって何回も水抜きする(目的は温度管理と土中に発生するメタン等のガス抜き等)から、その排水が環境へ大量に流れ込む。琵琶湖の水が春になると“富養化現象”を起こすのはこの為である。この水を、京都や大阪の人々は飲むのである。
 これらの忌まわしい出来事は、ゆっくりと静かに進行しているため、多忙な現代人は日常的に気付かないか、気付いてもどうすべきかの方法を考えることができず、やがて忘れてしまうのである。
こうして全世界が、かってレイチェル・カーソンが警鐘を与えた「沈黙の春」へと至るのであろうか!?  いや違う!!違う!!、これから私が皆さんに提示する内容は、まさに人類史上類を見ない程の「農業革命」であり、自然から離反した現代農業を自然に帰す、唯一の具体的方法論であり、危機的な世界を救う科学論・哲学論でもあります。
 どうか1日も早く、この農法が全世界に普及することを祈って..。

不耕起03
≪現代農法の“耕す”田植えによる琵琶湖汚染の写真≫(提供:県立琵琶湖研究所)


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1.すべては<福岡正信>から始まった


  今から約26年前、私は「福岡正信氏」(伊予市)の自然農法を、京都大学農学部教授・坂本慶一氏のエッセー(京都新聞'73.11.10)で知った。
 その農法とは:『無耕起・無肥料・無除草・無農薬・無剪定』とまさに「無」の一語につきる驚くべき内容であった。しかも通常農法の2倍ほどの収穫がある、という。
ではお百姓さん達の今までの苦労は何だ!?、大学で教える「農学」とは一体何だ!?、人間の知性の結晶であるはずの「科学」とは一体何だ!?。
根底的な疑問に圧倒された私(当時学生)は、彼の農法を学ぶため1カ月ほど伊予市に滞在した。その頃から、彼の思想は“自然派活動家”達のバイブルとなる。
 彼の著書「無 --最後の哲学」等は翻訳されて諸外国でも読まれた。 その後、中曽根氏がわが国の首相であったころ、テレビで対談があった。対談者の草柳氏が中曽根氏に、「私がヨーロッパの某国で歩いていると『あなたは日本人か?、日本人を見直したよ.フクオカの思想は本当にスゴイ!』と絶賛するのです.総理は福岡という人を知っていますか?」。中曽根は「知らない」と答えた。そうであろう。もし日本の首相が福岡氏の思想を知っていたら、またその時、草柳氏の言葉を真摯に受けとめて彼の思想を検討していたら、日本は今ほど深刻な環境破壊に悩まなかったに違いない。
 その頃、既に「沈黙の春」が出版され、“大新聞”朝日には有吉佐和子の「複合汚染」が連載されていた。のに..、世の中は何も変わらなかった・・。

 (この原稿を書いた数日後の朝日新聞夕刊=99年5月7日付2面に、福岡正信氏が大きく紹介されていた!!。まだ生きていたんですねぇ、懐かしいなぁ..。“世界” でますますご活躍のようで、インドではガンジーと呼ばれ最高栄誉賞を、ギリシャではソクラテスに例えられ、フィリピンではマグサイサイ賞を受賞されたようです。ただその記事も、いみじくも次章から私が指摘した“彼の農法の欠点”を次のように述べていた:『だが日本では、その農法は文明批判論として絶賛されても、実践する農家は少ない。「自然農法では家が建たない」と..。』)

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2.<福岡農法>の「欠点」


 しかし私が伊予市で学んだこと、さらにその後多くの「福岡農法の実践家」達の報告から学んだ事は、次のような福岡農法の「欠点」である:(ちなみに私も実践したかったが、私には田畑がない...(^^;)
 a)収穫量が不安定    -> 通常農法の2倍の収穫がとれるかと思うと、半分のときもある。
 b)作業時間が長い    -> 機械も使わないので、けっこう「手間」がかかる。
 そこでいろいろな「改良」が試みられてきました。その一例は、今年の99年1月 24日にテレビ朝日系で放送された桜井市・川口氏の自然農である。 この放送の面白いことは、川口氏と隣接して、有機農法の東氏、通常農法の吉岡氏、の水田があり、その三者の比較をしたことだ:

  川口氏(自然農法)-> 不耕起・無肥料・無農薬・初期のみ人手で草刈り.  東 氏(有機農法)-> 機械で耕す・有機肥料・無農薬・機械による除草.  吉岡氏(通常農法)-> 通常の農薬・化学肥料による農法でもちろん耕す.

(1反当りの比較)     川口氏(自然農)     東氏(有機農)     吉岡氏(通常農)     付 記
1)作業時間               138時間                40時間                 24時間    
2)収 穫 量                  7俵                       8俵                       8俵     台風があるも例年並み
3)売価/俵                \20,000                \20,000                 4,000     無農薬は高く売れる
4)経  費                     \1,000                \56,800                \15,000     作業人件費は含まず
5)収  支                 \139,000             \103,200              \102,000   

 3)*2)-4) = 約5)

 ここで川口氏は、福岡農法の欠点a)を克服して、毎年安定した収穫量を得ることができている。しかも自然農による米は台風冷害や病気などに極めて強いから、通常の現代農法よりも収穫が安定している、と言える。
 しかし、福岡農法の欠点b)は解決されていない。通常農法の吉岡氏がテレビのレポーターに言った: 「川口さんのやり方ではトシをとったらできないよ・・」 確かに、川口方式の自然農法は、時間が現代農法の5倍以上かかるので、いくら自然農法が良いといっても、現代の経済社会には残念ながら現実的でない。
 そして結局は通常、少なくとも1回は除草剤を散布する方法がとられる。ただしこれでも市場では立派に「無農薬・有機栽培」として販売されているが..。(ひどい場合には、通常農法の農薬タップリの作物が「無農薬・有機栽培」として売られるケースも多い)

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3.欠点をついに克服した<岩澤農法>
 

 そして、ついに福岡農法の欠点を克服して、あらゆる意味で現代農法を凌駕する自然農法が現れたのである!。私はこの事実を伝えるのに強い興奮を抑えることができない。日本不耕起栽培普及会(千葉市)の会長・岩澤信夫氏が指導する「自然耕のコメ」農法である。
彼も福岡正信の大きな影響を受けて、その農法に改良を重ねてきた一人である。私は「サヤミドロ自然農法」と呼んでいる。 まず先程の比較表と対比させてみよう:

(1反当りの比較)     岩澤農法(自然耕)     付 記
1)作業時間                      15時間                  通常農法の6割以下(機械も積極的に使用)
2)収 穫 量                       8〜15俵                平均12俵といった所(東北等は多収穫可能)
3)〜5)           現在試算を依頼中

 もちろん完全に無農薬!!・完全に無化学肥料!!・無耕起・無除草である。 除草は不要どころか、この農法では「サヤミドロ」という藻の一種の雑草を、逆に絶対に必要としており、これ無くしてこの農法は実現しない。雑草必要農法とでも言うべきで、サヤミドロは米の「共生植物」=仲良しさんなのである
。 ちなみに収穫量だけでいうと、九州の日本バイオという会社がバイテクを用いて反当たり27俵という驚異的収穫を得ているが、試験段階である。 岩澤農法の田圃では、ドジョウやメダカ、タニシ等で満ちあふれ、アキアカネやトンボ、ホタルが飛び交い、冬には雁が4万羽!(宮城県田尻町)もこの自然耕の田圃をめがけて飛来した(これには雁の専門家も驚いて、今月の5月コスタリカで開催されたラムサール国際会議にて発表)。
 この農法の実践農家は現在全国で約千軒、まだまだ少ない。ただし今年からは、滋賀県の湖北町小倉地区が「琵琶湖をきれいに」の合い言葉で、この自然耕の農法に全面的に切り替えていこうと試験栽培を開始するなど、飛躍的増加が期待されている。(実は私は来週、その湖北町での田植えに参加する予定で、期待いっぱいでこの原稿を書いている)

不耕起01
同じ品種なのに、不耕起の稲(右)は野生化して逞しい根を有す

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4.<岩澤式・自然耕のコメ>の概要


 1)不耕起

 農「耕」が始まってから約1万年と言われる。だとしたら人類は長い間とんだ思い違いをしてきたことになる。大学でも、農業試験場でも、「耕す」ことが大前提として研究が進められてきた。

 では<何故、不耕起栽培の方が良いか?>:
 有毒ガスが発生しないので根腐れしない  
  田植え後に水をはった時、耕した田では有機物が水底下の土中で分解してメタンガス等の有害ガスを発生(プクプクと底から泡がでるのを見た人もいるだろう)して根腐れの原因となるが、不耕田にはそれが無い。
メタンガスは二酸化炭素の20倍近い地球温暖化の要因となっている。(具体的数字として、日本におけるメタンガス放出の24%は田圃からであり、1反当たり65Kgであるが、不耕起農法なら5Kgと十分の1以下)
 根が野生化して太くて強くなる  
  不耕田の土はとても固い(踏んでも足が入らない)ため、田植えされた苗 は簡単には根を土中に伸ばせない。耕された柔らかい土では考えられない大きな負荷を与えられた“やつら”は、生きるためにエチレンというホルモンを大量分泌させて根を太くて強くするのである。
つまり稲の根が逆境のため“野生化”して、通常の稲と比べて体積比で10倍以上となる。ちな   みに土が固いことはモグラやヒルを発生させ難くする。
 土地の酸化還元電位を還元側にする耕転することは酸素を土中に入れることである。今までは酸素は多いほど良いと信じられてきた。しかし最新の医学の研究でも、「病気の85%の 真因は活性酸素にある」とか、「酸素は本来、生命進化上での考察からも 猛毒として作用してた」(NHK特別番組等)等が明らかになったことで、酸素を土中に入れることは、酸化還元電位を酸化側に傾けると考えられるので、好ましくないはずである。
人間も作物(植物)も、生命という観点から考えれば、その健康管理も共通しているはずである。今後の農学者の研究が待たれるところである。
 
農業経営という観点からのメリットを述べると:
 労働力の4割以上を削減できる耕さないのであるから、当然に「田起こし」や「代かき」が不要なので、それだけで通常農法の労働力の4割が削減できる。 
省エネ・低コスト化を実現農業機械でいちばん高価な機械=トラクター等が不要となる。 根が不耕起という逆境に克服し、野生化してかえって健康に成長するのは興味深い事実である。アマちゃんに育てる(耕す)と結局は脆弱となるのは人間も同じである。
森の巨木を見よ!、誰がその土を耕しているのか? 平成5年の大冷害による「米騒動」の際、不耕起栽培の稲はほとんど被害を受けず、収穫も十分にあったことから、それまでは冷淡だった国も一転して不耕起栽培の見直しに重い腰を上げたらしい。

 2)苗作り

  しかし固い土に対抗する逞しい稲を作るためには、人間でいえば乳幼児期にあたる苗作りが大切である。従来の稲作では温室で育てた“稚苗”を植えるが、自然耕では低温の外気で育てた“成苗”を使う  しかも足で踏んだりして刺激を与えて“特訓”する。
こうして強い苗を育てるからこそ、固い土にしっかりと根を張り、雑草にも負けないのである。

 3)独自開発の田植機

 不耕田は足が入らないほど固い。しかも草だらけである。そんなところでは通常の田植機では田植えができない。そこで、固い土の一部をカットして植苗する特殊カッター付き田植機 が考案開発された。
いくら自然農法が良いといっても、手間ばかりかかれば現代のニーズに適合しない。福岡農法の欠点b)を克服する大きなツールである。

 4)鯉の放流

 稲の共生植物=サヤミドロが繁茂するまで、除草の目的で鯉を田圃に放流する。

 5)サヤミドロを基盤とする生態系

 土を耕さないから残った根は土中で無数の根穴を作る。このため、土はスポンジ状の自然に耕した(自然耕の)状態 に変わる。
また同じく残った昨年度の稲わらは水中で分解(土中で分解しないから有害ガスが発生しないのでしたね!)され、それを養分として、サヤミドロと呼ばれる藻が大量に(ほんと大量に!)発生 するのである(ちなみに、一般の田圃に発生する藻にアオミドロがあるが、これは水面に繁茂して日射を遮るので害がある。反対に、サヤミドロは水底に繁茂するのが大きく違う)。
そして、サヤミドロは水中に多量の酸素を放出する ために、田圃の水の溶存酸素量は多く(先述の土中酸素量でないところがミソ)、クリーンな水作りに寄与してメタンガスが発生しない。植物性プランクトンが発生し、これをエサとする動物性プランクトンが増殖する。
やがてトンボやドジョウ、タニシ、ホタル、ザリガニなどのさまざまな小動物が大量に(ほんとに大量に!)生息 するようになる。
こうして生まれた食物連鎖の輪から、生物の排泄物・死骸が、微生物に分解され、そのまま膨大で天然の肥料となる のである。もちろん害虫も発生するが、その天敵となるアメンボウやタガメ、クモなどの生物も大量発生する。
つまり「農薬・化学肥料を使わない」のではなくて、農薬・化学肥料を使ったら絶対に困る自然生態系 ができあがって稲の生育をサポートするのである。

 6)水の管理  

  ある時期、稲穂をたくさん実らせる目的で、田圃の水をタップリ供給する。また通常農法と違って、収穫まで水を張ったままである。こうしてできあがった稲は、米の粒が普通の稲作より20%も大きくコメ1粒1粒もずっしり重い。

 7)コメの味

 肉質が緻密な自然耕のコメは、炊きたてはもちろん、おにぎりなどにして一晩置いても、弾力や風味はあまり損なわれないようだ。これは表面にミネラルやアミノ酸を多く含む「サビオ層」と呼ばれる層が従来農法のコメより厚く発達して保水の役割を果たしているためだという。

 8)独自の流通ネットワークの整備

 以上見てきたように、自然耕のコメは“良いことづくめ”である。 しかし、いくら良い、と分かっていても、現代社会において、単純に言ってしまえば、「儲からなくては従来の現代農法から切り替える訳にはいかない」、と言うのが農家の本音であった。そしてついに、福岡農法の欠点を克服した“儲かる自然農法”の岩澤農法が出現したのである。
だが、つい数年前までは、“規制の壁”という障壁がまだ存在していた。 数年前、コメの自由化が施行されたおかげで(政府もたまには良い事をしたものだとつくづく思う)、やっと良いことづくめの「自然耕のコメ」が流通するようになった。いくら良いものでも、売れなくては普及しないですからね? ここで忘れてはならないのが、通常の流通ネットワークでは「ブレンド米」と言って、ミソもクソも一緒にブレンドして流通にのせることだ。これでは、せっかく作った革命的「自然耕のコメ」も、作った甲斐がない。 そこで、岩澤氏の農法とその意義に賛同した大阪市の株式会社サンスーシ(特に吉実祐捷専務が中心)が「水田・環境・健康・子供たちを守る会」を発足させ、その普及事業を開始した。弊社アーク・テクノリサーチ社もそれを支援する。

 お問い合わせ先: アーク・テクノリサーチ株式会社 有川まで.
 Email: ark@kyoto.zaq.ne.jp    

 補足)現在、中国ではジャポニカ米が大量栽培され、1俵(60Kg)が5千円で輸入されているそうだ。現地出荷価格は千8百円..!。今のところ1万6千円の関税をかけているからまだ大丈夫だけれど、3年くらいでその関税も撤廃されるらしく、そうなると1俵が2万円前後の日本農家のコメは大打撃となり、米作をやめざるを得ない農家が続出すると考えられます。農家の唯一の生き残り策は「完全無農薬」を前面に出して(この実現には不耕起自然農法しか考えられない)、中国の輸入米と差別化することで、高価格の日本米でも買ってもらえる消費者とのネットワーク作りしかない!、という結論になるのではないでしょうか?


不耕起02
台風で倒伏した通常の稲(左下)と、対照的な不耕起の稲(右上)


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5.<畑作り>にも援用できる不耕起自然農法


 ここまで見てきた「不耕起自然農法」は“コメ作り”だけであった。これはもちろん、“畑作り”にも援用して野菜などを作ることができる。 実は私の“身近か”(といっても知人の知人でクルマで30分の距離)でこれを実践しているK氏を紹介したい。ただし彼は、「たかだか菜園レベルのものですから・・」と謙遜する上、「万一、見学者が来られても困る・・」とたいへんシャイなのである。
以下、彼の随筆よりまとめた:
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「K氏は10数年前から家業を継ぐため実家にもどった。たまたま近所の農家の婆さんからもらった有機栽培のネギの“味と香り”に感動し、これまで食べていた八百屋やスーパーのものとは大違いであることを知る。さらにある時、その婆さんがキャベツ畑で竿にくくりつけた“うちわ”で、しきりにキャベツたちを扇いでいる奇妙な風景に出会う。
尋ねると、『もんしろ蝶を追っ払ぉてますねん』・・、キャベツに蝶が卵を産みつけるのを防ぐためだったのだ。 キャベツからアオムシなどの害をさけるには、いまや農薬を使用しなければ不可能とされている。
その婆さんは“農薬を使わない”代償として、“うちわで蝶を追っ払う”という行為を選んだ。しかし老いた身に毎日うちわを扇ぐ労働は過酷であり、あまりにも効率が悪い。
K氏は「そこまでしなければならないのか」と衝撃を受ける。
 それを機にK氏は菜園に挑戦する。近くの畑地を借り、農薬や化学肥料を一切使わない野菜作りが始まった。あの“ネギの味と香り”を想い、また“うちわで扇ぐ” ことがはたして最良の方法なのか、を確かめたかった。

 しかし菜園にまったく経験がないK氏は、現実の厳しさをしっかり味わうことになる。ネギの生育はかんばしくなかった。それを聞いた知人が化学肥料をまくと..、ネギはたちまち肥大した。K氏は、化学肥料の絶大な効果を思い知った。
だがそのネギの味は、あの婆さんのネギに程遠かった。
 やはり、農薬や化学肥料は意地でも使わない!、と再決心して、良質堆肥や有機物をあれこれ試した。だが“有機農法”による弊害は想像以上であった。ご多聞にもれず、ムシの害や作物の病気に悩まされる。とうもろこし・三度豆・空豆などはアブラムシで真っ黒になった。ニノナの葉っぱなんぞはムシに食べられ、そっくり無くなる時がある。ネギ類はまあまあの出来であるが、菜っ葉類や豆類はあまりにも失敗が多かった。
当然キャベツ作りにも何度も挑戦したが、まるでアオムシのために植えるようなもので、アッという間に茎と葉脈ばかりの骸骨ができる。(本業をもつK氏には、週に1度くらいしか畑に通えないので、婆さんのようにうちわで扇ぐわけにもいかない) さらに有機肥料を使い続けると、ミミズが殖える。するとそれを狙ってモグラがやってくる。さらにその穴道を利用して野ネズミがやってきて根を食い荒らす。他に山鳩が好物の豆類を狙う。トマトなんかは丁度おいしく熟れたときにカラスに持っていかれる。彼らは無農薬の作物であることをよく知っている!
 K氏が菜園を始めてから十年余りまで、まだ他にも作物の難敵と思っていたものがある。“雑草”!、まさしく畑の嫌われものだ....。誰もがするように、当然のように、彼もせっせと草を引き抜くことに精を出していた。
 ところがある時、K氏は不思議に思った。仕事が忙しく畑をしばらく放っておいた時のことである。作物を包み込むように生えているその草たちは、それぞれ作物の種類によって、その草の種類も違うのだ。




もしかしたら、それぞれの作物と雑草の間には、なにか“共生”関係があるのではないか?。たとえばマメ科植物と根粒のような..。 引き抜かれなかった雑草の中に大根たちがひっそりと育っている。成長は遅かったがその葉っぱはほとんど無傷だった。農薬を浴びない葉っぱは、いつもならムシのために穴だらけなのに!..そして、そして、傍らの雑草がムシに喰われていた。ムシは雑草をも喰うのだ!!..いや、野菜も雑草も同族であるという、当たり前の事に、K氏は気付かされたのである。
 もしかして除草は必要ないのではないか?、むしろ作物にとって雑草は不可欠なものかもしれない。作物と雑草を共存させてみよう、と決心したのである。

 K氏は小さい頃から山を眺めるのが好きだった。春の木々の、白や黄色から深い緑に移りゆく様子や、そのさまざまな緑色の多彩さを楽しんだ。秋から冬の、黄や赤色の移ろいは心に沁みた。 「いつの頃からか、山が赤くならなくなった」、とK氏は嘆く。
山の所有者達は “雑木”を処分し、年がら年中、色の変わらない樹木を植林する。今や多くの山々で本来の“自然”がなくなり、田畑と同様になった。雑木の伐採や、同種ばかりの植林は、雨風などの天災に弱い。
K氏の友人の山もつい最近、檜が台風により壊滅した。30年前、彼は山の全部を檜に植え替えたのだった。また昨今、輸入材により日本の林業は採算が合わないため、樹木の管理を放置する。人々が花粉に悩まされるようになったのは、そのことも大きな要因である。 日本には四季がある。その四季があるゆえに多くの落葉樹がある。落ちた枯葉は養分豊かな土を作り、あるいは川や海にプランクトンを育み、多くの生物たちを養う。
ある漁村で魚介類激減の原因を調査したところ、常緑樹ばかりの山の植林が最大の要因であるとの結果が出たそうである。だからまた元の山の姿に戻す計画が立てられたらしい。

 さてK氏は、「自分の畑も本来の山に近づけよう」と考えた。畑を山に近づけるとはあまりにも大仰だが、それは“作物と雑草の共存”を意味するものだった。先の“ムシに喰われない大根の葉”を発見したのがきっかけとなったのだ。
 自然界には自然界のバランスがある。野山にも、雑多な植物や大小の動物たちの共生があり、生態系のバランスがある。山の植物にも病虫害はあるだろうが、薬をやらずとも彼らは知恵を働かし、工夫しあって逞しく生き延びている。
また天然の山にわざわざ肥料を与え、あるいは耕す者がいるだろうか? 山にも人間が食することのできる植物が沢山ある。
K氏は季節になれば山菜採りに熱中する。それは“天然の味”の魅力が彼を掻き立てるのだ。どういうわけか、自然の中に育ったものの方が美味しい。魚介類だってたいていは養殖ものより天然の方が味が良い。畑の作物だって、できるだけ保護しないようにすれば美味しいものが出来るのではなかろうか。 K氏のめざす菜園、それは病虫害に強く美味しい作物づくりであり、“より自然に近い畑”にすることにあったのだ。

 K氏が雑草を抜かない菜園を始めて7年が経つそうである。
夏になれば彼の畑はジャングルの様相を呈している。雑草の中に雑多に植えられたオクラ・ずいき・唐辛子など、それらの狭間に自然に生えた赤と青の紫蘇たち、黒豆や青大豆の葉は濃い緑に染まり、活き活きとして逞しい。彼らは競い合ってK氏の背丈よりも大きく成長するものがいる。よく見ると、彼ら作物は、不思議と雑草と同じような背丈にバランスを保っているのだ。それも実に逞しい。
 この“背丈のバランス”はセイタカアワダチソウに顕著にみることができる。かって外国からきたこの草は日本を席倦していたが、最近は目立たなくなってきた。背丈もセイタカでなくなり、他の雑草に並びずいぶん低くなった。おそらく他の植物たちの反撃があったであろうし、セイタカアワダチソウが日本で生き残るためには自らを抑制する方法を選んだのであろう。
畑でも1種類の雑草が独占することはないし、作物が雑草に負けることはほとんどない。また作物だけを独占させることは、作物を軟弱にするだけである。
 雑草を生やしていると昆虫たちが数多くやって来る。昆虫はムシを食べてくれる。つまり害虫の天敵である。雑草は土壌の乾燥を防ぎ作物の根を保護してくれる。草の根は土中の通気性をよくし土を柔らかくする。すこし掘り返せばミミズがあふれ出る。草の根が邪魔するのかモグラもやって来ない。
以前はスイカもカラスにやられっぱなしだったが、敷きわらを止めて替わりに雑草を生やすと、どういうわけかカラスが来ない。雑草がカラスの目をくらますのだろうか? キャベツも周囲に雑草を生やしておけば立派に出来る。
雑草がクモなどの棲み家となり、蝶や蛾の幼虫を食べてくれる。表面は多少穴あきもあるが、2〜3枚剥ぎ取れば中は無傷だ。ぱんぱんに締まったキャベツの味は格別だ。
冬が来ればK氏は雑草の中からネギを引き抜く。強烈な香りが辺りに広がる。みずみずしい葉ネギをきざむと玉葱を切るときのように涙が溢れる。婆さんの“ネギの味”を越えた、とK氏は秘かに自慢する。 あの“うちわの婆さん”も農薬を使わなかった。だが思い出せばキャベツ畑には草が一本も生えていなかった。雑草と共存させればうちわで扇ぐ必要はなかったのに、とK氏は思う。(老さんは8年前に亡くなった)

 さて“作物と雑草の共存”は良いことずくめでもない。年によって作物の出来不出来の差が大きいし、他の農法に比べれば収穫も高いとは言えない。中にはムシにやられるのもあるし、まれにだが雑草のため消えてしまう苗もある。作物によっては中耕や土寄せが大切なものもあるし(雑草成育の抑制が目的)、ある程度肥料を必要とするものもある。
 何といっても、かって作物は人間に保護されることにより生存を維持する方法を選んだ。野性味がまだその遺伝子に残っているものならともかく、人間の手を加えなけば育たなくなったものもあるのだ。
 そのような意味ではK氏の菜園は矛盾を含むが、彼は「それでもよい」と思っている。野山にだって生存競争に負けて消えるものもある。まして畑でなにもかも育つのは無理に決まっている。残れるものは残ればよい。収穫が少なくても美味しいものが出来ればいい。彼はそれを趣味と割り切っている。」
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K氏が最近見つけて、福音の書とする本がある。
『農薬を使わない野菜づくり』で著者は徳野雅仁氏。無除草・無耕転・無肥料の菜園を記録した<自然農法による野菜づくり>の本である。
その要点を紹介する: 
◇化学肥料は作物を急速に育てるが軟弱となり、農薬は有益生物も抹殺して植物  の自然治癒力まで弱める。
◇化学農法は土を無機化させ病虫害を多発させるが、有機農法もまた多肥信仰に  よって病虫害の発生を招いている。 
◇除草によりムシは野菜に集中する。ムシは雑草も食べるから、除草によりムシ  たちの食物を奪うことになる。 
◇雑草は作物への日照をさえぎるものだけ刈り取り、根は残す。雑草の根は土を  自然に耕して、やがて腐敗する根は天然の肥料となる。 
◇耕転は自然環境を破壊し微生物界を混乱させる。土壌の酸性化は、化学肥料や  耕転、雑草を抜くことによりひき起こされる。 
◇自然の摂理、輪廻にできるだけ逆らわない。作物は人の手を加えないほど健康  に育つ。 こうしたK氏や徳野氏のような方々は、現在あまり知られていないだけで、他にもきっと日本中に大勢おられるのかもしれない。だとしたら本当に心丈夫な限りである。

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 6.弊社独自?の<有川式・過激な自然農法>


 私が子供の頃、その季節になると、近くの川の土手にはゼンマイ、ワラビ、ツクシ等が自然に多く発生した。近くの山では半分野生のクリやイチヂクが、それこそタワワとなったのである。イモも野イチゴもある。私はそれらをハラいっぱい食うことができた。タケノコなどは食べきれないで困った。
 しかしある頃、都会から多くの人々がやってきて、それらをすべて取り尽くしてしまってからは、ペンペン草だけが生い茂る有り様となってしまったのだ。
昔の人はこう言っていたように思う。
「3分の1だけは必ず残しなさい.そうすれば来年もまた生えてくるから..」と。
 福岡式でもいい、岩澤式でもいい、これらの優れた農法でいったん自然生態系ができあがったら、後は、その先人の教えに従ってみたらどうだろう..。 
そう!、私が考える農法とは:
   種も蒔かないで、3分の2を収穫するだけの農法 なのである。これは単なる空想論であろうか?
 その背景には「自然は必要なものをすべて準備してくれる(但し分を越えないこと)」、という思想がある。 子供の頃に経験した事から考えれば、こうした仮説は、あながち夢想ではない気がするのである(もちろん実現には多くの試行錯誤が必要だろうけど..)。“耕さない”農法がウッソー?、であったように、“種も蒔かない”あるいは“田植えもしない”農法も十分に可能性はある。イネだってかって太古は、野生で生えていたはずですからね?
 しかし、それでは収穫量は少ないだろう、って? では、今でも季節がくれば、あたり一面が勝手に菜の花で咲き乱れる土手等を見たことがありませんか? 自然に任せているのにスゴイ“収穫量”ではありませんか。
きっと土中における細菌の種類と生態系が、ある特定種類の植物(この例では菜の花)を特に密生して繁茂させることに、大きく関与していると私は想像している。このあたりを研究すれば、必ず良い結果が得られると考える。
 もっとも3分の2しか収穫しないので、結果的に収穫量が落ちたにせよ、なにせ生産労働力はゼロに等しいので、ケッコー収支もいけるのではないか? 確かに、福岡農法よりも“過激な”内容なので、“安定して儲かる”岩澤農法から見れば、当分は現代資本主義社会にマッチしない可能性は高い。それでも試してみる価値は充分あると思うのだが..。

 補足)この“種も蒔かない農法”は、実は「国民皆農」の構想と結びつけたいという私のイメージがある。国民が食べるものの大部分を自分で作る。いや正確には人間が作っているわけではないので、自分が占有する“農地”から、必要最小限の食べ物を単に収穫するのみである。別のセクションで紹介する“少食健康法”等を国民が実践すれば、その土地の面積は驚くほど少なくてすむはずだ。また農薬工場を始め多くの産業用土地が無用となるので、そうした土地が供給できる。 もっともこの構想が実現するのには、最低百年はかかるだろうけど..。

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 7.新約聖書からも演繹できる不耕起自然農法


  断っておきたいが、私はキリスト教信者でもないばかりか、どの特定の宗教団体に属する者でもない。ただ、次の新約聖書の1節は、不耕起農法の基となる「自然哲学」思想を説いているので注目した: 
『空の鳥を見なさい。種蒔きもせず、刈り入れもせず倉に納めることもしない。けれども、あなたがたの天なる父がこれを養ってくださるのです。あなたがたは、鳥よりも、もっとすぐれたものではありませんか。(中略) 野のゆりがどうして育つのか、よくわきまえなさい。働きもせず紡ぎもしません。しかし、わたしはあなたがたに言います。栄華を窮めたソロモンでさえ、このような花の1つほどにも着飾ってはいませんでした。今日あっても明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこれほどに養ってくださるのだから、ましてあなたがたに、よくしてくださらないわけがありましょうか』(マタイ福音書・6章26〜30節)
 イエスがこの教えを説いた時、そのまわりには大きな森がなかったため、「空の鳥」や「野のゆり」で例えられているが、もし日本人の前なら、彼は、「森の大木がどうして育つのか、よくわきまえなさい」と説いたはずだ。 キリスト教の聖職者をはじめ、聖書研究者は、この新約聖書の福音の意味を真に理解すれば、当然ながら不耕起・無除草等の自然農法の考えにたどり着けたはずなのに、そして人々を“本当の教え”に導くことができたはずなのに、何故できなかったのだろうか、と不思議に思いませんか? それどころか、子供の頃から福音書を知っているはずの西洋人こそが、キリストの教えの反対を説く「現代化学農法」を発展させたのであるから..。

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8.まとめ:遺伝子操作の大豆を生んだ科学?


  人類を月にまで運んだ“西洋科学”は、今のところ絶対的な数の信奉者を誇っている。しかし生命を対象としない科学技術ならまだしも、対象がこと生命に関連してくると、その教義は怪しい影を落とす。 西洋科学では、「生命さえも精密な機械にすぎない」と考えるからである。
 遺伝子操作された花と蜜バチの実験が某テレビで放送された: 
2本の花がある。一方は遺伝子を操作されており、一方は普通の花である。双方は壁で隔離されている。双方に蜜バチが入れられ、各々花の蜜を吸う。数分後..、遺伝子操作の花の蜜を吸ったハチは、花からポロリと落ちて息絶える..!!。これは遺伝子操作によって、花の蜜に「限定的毒性」を与えたからである。
 現在、遺伝子操作の大豆が多く流通している。大豆を遺伝子操作する理由は主に次の2つである:
 1)除草剤に強い品種作り
 2)害虫が大豆を食べないように「限定的毒性を持った」品種作り
 後者の場合、当局は、この「毒性物質」は人間の腸から吸収されないので安全、としているが、腸管にキズのあるアレルギー疾患の人には安全でないはずだ。だいいち、何十年以上の長期にわたった安全試験ができたはずもない。
 自然を克服しようとする西洋科学の思想からは、こうして自然を複雑怪奇なバケモノに改造するのである。目前の1つの問題を解決したかにみえて、新たに多くの複雑で困難な問題を抱え込むことになるのだ。いつになったら“科学者”はそれに気付くのだろうか? こうした「天にツバする行為」はやがて、自らが造りだしたバケモノによって手痛いしっぺ返しを受けることになるだろう。 いやそうなってからでは遅いのである。
 不耕起自然農法なら、除草剤も不要で、害虫にも負けない。つまり、自然農法の作物なら遺伝子操作をする必要すらない!! のである。
早急にこの農法を世界に普及しなければならない。
 福岡農法は、残念ながら“家も建たない”欠点があった。
しかし岩澤農法がその欠点を克服して、“家も建つうえベンツにも乗れる”資本主義的自然農法を可能のものにした。
文明論からいえば、本当は福岡農法の方が望ましいのかもしれないが、現実論からいえば“世界を変える”農法は、当分の間、後者であろう。 さらにこれを単に「農業の技術」としてではなく、“新しい科学”への大いなる示唆として真摯に受けとめなければならないのだ。 さもなければ人類に未来はないのだから....。


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